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地方鉄道経営再建の処方箋<第4回>(起稿班研究第七号・その4)

 前回はJRとの乗り入れによる経営再建の可能性について少しだけ述べましたが、今回は成功例を挙げて詳しく説明したいと思います。

 智頭急行という第三セクター鉄道があります。ここはまさにJR乗り入れの成功例というべきで、全国の第三セクターは赤字だらけだというのに、智頭急行は年間2億円もの利益をたたき出しています。全国の地方鉄道の中で最も有望な存在といえるでしょう。鳥取や岡山の県北など決して人口が多いとはいえない地域を走っているローカル線に過ぎない同社が、なぜここまでの利益をたたき出しているのでしょうか。

 智頭急行線は、ご存じ「スーパーはくと」「スーパーいなば」という京阪神や岡山と鳥取を結ぶ特急列車が一日合計26本も走っています。これらの売り上げでも統計すると莫大な金額になり、結果として同社の経営を下支えしています。現に開業間もない1995年1月の阪神・淡路大震災によって「スーパーはくと」が全面運休に追い込まれると、初年度の売上高は予想の1割程度にしか達さず開業早々倒産の危機に直面しましたが、運行再開後はふたたび黒字を計上しています。

 ちなみに同社の旅客収入は13.1億円であるが、うち定期外収入12.9億円、定期内収入は0.2億円という全国でもまれな比率であり、智頭急行の特急依存を如実に表しています。

 このように、大都市と地方都市を結ぶショートカットルートとなる地方鉄道は、JRとの乗り入れによって経営を一気に黒字転換させることができるのです。

ですが、ここで忘れてはいけないのが、現存の地方鉄道は昭和末期に国鉄が切り離した大赤字路線であることが多いということです。智頭急行のようなショートカットルートとなる路線が切り離されたケースは少なく、多くの地方鉄道では智頭急行のような成功は望めません。ちなみに智頭急行は、国鉄末期に計画されおおかた土地買収が完了したものの資金難で凍結され、その後を引き継ぐ形で現地の自治体が協力して設立したのです。このように国鉄分割後に作られた路線ならともかく、多くの地方鉄道では参考にすらならないと思っておいたほうがよさそうです。

現に東京・名古屋・博多近郊をのぞく私鉄・第三セクターとの乗り入れは東北に1例(仙台空港鉄道)関東に1例(鹿島臨海鉄道)中部に3例(富士急行伊豆急行北越急行)関西に1例(京都丹後鉄道)中国地方に2例(智頭急行井原鉄道)の計8例のみで、うち元国鉄路線はたったの4線ですから、やはりJRとの乗り入れというのは相当実現可能性が低いということがわかります。

経営再建以前に乗り入れを実現させること自体地方鉄道には望みが薄いのです。

 次回は観光列車運行による旅客数増加という観点からの経営再建について述べたいと思います。

 

執筆:No.7409

校正:No.7212(起稿班班長)

 

起稿班研究第七号の過去記事はこちら↓

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