灘校鉄道研究部公式ブログ

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地方鉄道経営再建の処方箋<第1回>(起稿班研究第七号・その1)

1.まえがき

 地方の人口減少が叫ばれる当世ですが、鉄道業はそのあおりを十分に受けている業種の最たるものです。利用者が少なければ、収益はおのずと減少し、赤字に転落する。これは鉄道業のみならずすべてのサービス業にいえることです。だが、経営者にとって鉄道業はほかのサービス業にくらべて圧倒的に経営再建への努力が必要であるといえるでしょう。なぜならば、鉄道業というのはいわゆるライフラインの一つであり、その路線がつぶれると都市部に出ることができない人がいる以上、経営が火の車であるからといってなかなか店をたたむことができないからです。従って鉄道会社は総じて知恵を絞って努力をして経営を上向けようとします。今回は、その努力にスポットを当てて書くことにしましょう。

 

2.基本的な方策

 この章では経営努力についてのおおまかな二つの流れについて述べたいと思います。

 基本的に、経営再建をめざす会社は運賃を上げるかサービスの「質」を低下するかの二者択一の選択をいやおうなしに迫られます。ではこの二つについてそれぞれ見ていくことにしましょう。

 まず一つ目の「運賃値上げ」であるが、これはしょせん即効的なものにすぎません。なぜならば、地方における鉄道の有力な対抗馬として「車」がありますが、車は高速道路や有料道路を走らない限り、基本的にはガソリン分しかお金がかからないので、あまり運賃を高くしすぎると車に乗り換えられてしまい、結果的には利用客の減少に輪をかけて、合計でみると収益がさらに減少したなどというケースは容易に考えられます。

 これに関しての興味深い調査結果があります。

龍谷大教授の井口富夫氏が2009年3月に行ったKTR(北近畿タンゴ鉄道)に関するアンケート(http://opac.ryukoku.ac.jp/webopac/skk-np_040_012._?key=MCDAYP

の中で、「現在のKTRの初乗り運賃が200円であるとして、初乗り運賃が選択肢のどの金額に値上げされるとKTRの利用をやめるか」という質問があり(ちなみに選択肢は220円、240円、260円、280円、300円、それ以上、利用し続ける)、それに対する回答で一番多かったのは300円であり、占める割合は25.7%でした。以下「利用し続ける」20.9%、220円20.3%と続いていますが、この結果が示しているのはやはり「値上げの許容範囲は100円まで」ということではないでしょうか。具体的な選択肢が300円どまりであったことによる心理的効果があったかもしれませんが、それを差し引いたとしても信頼のおけるデーターです。ちなみにこのアンケートには「何円まで値下げしたら自家用車利用者がKTRに乗り換えるか」や「KTRを利用する理由は何か」など車とKTRに関する質問がありました。興味のある方は先のリンクから結果を見ていただくとよいでしょう。

 

 次回はサービスの質の低下による経営再建の可能性について述べたいと思います。

 

執筆:No.7409

校正:No.7212(起稿班班長)