12.南海7100系解説 【2020年灘校鉄道研究部部誌「どんこう」】
去年誕生から50年の節目を迎えた7100系。計152両が1969年から1973年にかけて近畿車輌・東急車輌製造で製造され、非常に長い間南海本線の通勤車両、空港輸送、四国への連絡、支線ローカル輸送と「南海の顔」として幅広く活躍してきました。南海本線最古参となった今でも第一線での活躍を続けているものの、老朽化のため徐々に数を減らしています。そんな今後が注目される7100系の歴史と今の様子、そして今後の動向についてこの記事で解説していきたいと思います。
なお、編成を表す際はxxxxF(F=Formationの略)、車両単体を表す場合はC#xxxxと表記します。
それでは、この記事をお楽しみください。
7100系の誕生
時は1969年、1973年の南海本線600V→1500Vへの昇圧に向けて(もしこの昇圧が数年早かったら南海は堺筋線、阪急と直通していたかもしれませんが、ここではページ数の都合上割愛します)、戦前や終戦直後に作られた600V専用の老朽化した車両の置き換え用として製造されました。立ち位置としては7000系のマイナーチェンジというもので、7000系の一部の点(扉、台車など)を改善した形になっています。置き換え車両の対象車両が多かったのと南海本線の輸送量増強も並行して進められてため、152両と南海史上最大の両数が製造されました。
一次車
1969年に4両編成の7101F-7117Fの4両9編成が製造されました。このグループは製造当初非冷房で、1979年から1982年にかけて冷房化改造されました。また、一次車は廃車(後述します)前の準備として編成組み換えが行われ、6両6編成に再編されました。
二次車以降
1970年から1973年にかけて7123F―7197Fの4両19編成、2両20編成の116両が製造されました。なお製造当初から冷房化されており、このうち7157F以降の車両は製造当初から方向幕も設置されています。このように通勤車両として当時としてはかなり豪華であったことから、自由席特急や当時多奈川線に直通し淡路島への連絡船に接続していた(1993年に廃止)-急行-淡路号などを中心に運用されました。
外装・構造
現在の外装・構造について説明します。
普通鋼製で製造されました。というのもステンレス車体は耐久性が高いものの事故の際の修繕がかなり難しいため、ステンレスを採用した高野線に比べて踏切が多くそれゆえ踏切事故の多かった南海本線では鋼製が採用されました。これが後に塩害という問題点を引き起こすことになります。
車体設計は20m級4扉、扉は両開きと通勤車両としては一般的な設計です。パンタグラフは下枠交差式で、いわゆる「前パン顔」となっており、天井が丸みを帯びています。設計としては最高速度120km/hまで対応していますが、営業では110km/hまでしか出しません。なおこの設計最高速度120km/hという数字は、同年代の南海6000・6100や国鉄103系などの最高速度が100km/hであるのに比べるとかなりの高性能といえます。
制御方式(自動車でいうエンジンのことです)は抵抗制御となっています。抵抗制御は構造が簡単かつ安価ですが、電気消費量が多く省エネとは言い難いこと、また走行音が非常に大きいことから全国で置き換えが進んでいます。ですが整備が簡単なことから地方私鉄ではまだまだ多数が残っており、本気で省エネ社会を目指すならそういうところにもお金を支援していくべきです。え?環境問題はセクシーにって?
内装
ここでは現在の内装について解説していきます。車内はオールロングシートで、蛍光灯は直接照明となっています。椅子は柔らかいというわけではありませんが走ルンです8000系や8300系などといった新車に比べると心なしか快適な気がします。すれ違いの時窓が思いっきりに揺れますが。
扉周りです。今となっては当たり前の両開き扉を採用していますが、当時は片開きが主流でした。両開きは扉の開閉時間を短縮化できるというメリットがあります(しかし南海の6000・7000の片開は特殊なドアエンジンで開閉時間が短いのですが)。ご覧の通り扉付近の立席スペースが狭くなっており、現在のインバウンド需要に伴う大きな荷物を持った外国人観光客等からは不評となっています。また、LCD(液晶ディスプレイ)、LED(スクロールされるのです)などの車内案内記は設置されていません。
また、クーラーは天井に設置されていますが、大きくかなり目立つ構造となっています。ヒーターは椅子の下で、数年前から南海全体で暖房時の高熱への注意書きステッカーが貼られています。
改造
・更新工事・ワンマン対応化
先述した通り塩害による老朽化に南海は悩まされており、1989年から1990年代後半にかけて更新工事が行われました。内容としては前期更新(4両7133F、7137F、7153F,2両7127F、7131F、7143F)は外板・屋根鋼板の全面張替え、デコラ新調、床材の取り換え、方向幕設置となっています。後期更新(その他)はそれに追加して方向幕の大型化、車いすスペース設置、排障器設置、乗務員室に仕切り戸の追加が追加されて行われています。また、前期更新の18両は2007年に腐食防止として局部更新が行われています。
なお一次車は更新されていません(理由は後述)。
また、加太線・多奈川線・和歌山港線でのワンマン運転に備え、2000年より2両編成の一部にワンマン対応工事が施されました。自動放送装置、車体横スピーカーが設置されています。なお営業運転で他の7000・7100系と併結することはないため、難波側の全面貫通幌が撤去されています。
・タブレット式自動放送
2017年より空港輸送における外国人への案内サービスとして、一部編成の乗務員室にタブレット式自動放送が設置されています。
加太線観光列車「めでたいでんしゃ」
2014年より海の幸「鯛」モチーフにした観光列車「めでたいでんしゃ」が加太線で運行しています。南海電鉄の「加太さかな線」プロジェクトの一環として、2014年に7037F、2016年に7167F、2019年に7197Fがそれぞれリニューアルされ「さち」、「かい」、「なな」という愛称が付けられています。観光列車とは言えども内装を特別にした、カジュアルなものです。去年10月には3編成が難波駅に入線するイベントも行われました。なお運用は決まっていて、公式サイトより確認できるようになっています。
運用
南海本線では全車座席指定の有料特急「ラピート」を除く全種別の運用についています。朝ラッシュ時の女性専用車両設定の運用も2007年から開始しました。また特急「サザン」の指定席車のうち、10000系との連結自由席車は制御方式の都合上7100系の限定運用となっています。なお現在はそれ以外の系列との併結運転は行っていません。2015年までは7000系との併結運転を行っていましたが、7000系の引退に伴い終了しました。
廃車
車両形式・年度 |
2009年度末在籍数 |
2019年度末在籍数 |
7000系(全90両) |
64両 |
0両 |
7100系(全152両) |
114両 |
64両 |
合計(全242両) |
178両 |
64両 |
南海7000・7100系といった南海本線系統普通鋼製車両はここ10年で大幅に数を減らしています。8000系が2007年から2014年にかけて52両導入され、大阪府都市開発(現:泉北高速鉄道)から3000系が14両転属したため7000系は2015年までに全車が引退しました。
7100系に関しても一次車に関しては更新工事を行い延命するよりも新1000系で置き換えたほうが効率が良いと判断され、2003年までに36両全車が廃車されました。34年間での廃車は南海電鉄では異例の短命です。それ以外の車両に関しても現在50両が廃車され、残る7100系は2019年度末現在64両となっています。同時期にオールステンレスで製造され現在も全車両が現存している高野線の6000・6100系と比較すると海側を走り1994年からは関空連絡橋を走る普通鋼製の7000・7100系は老朽化が進んでしまうのも仕方ないと言えます。(むしろ高野線が丈夫すぎる)。なお現在残っている車両は4両編成の7121F,7129F,7137F,7153F,7157F,7165F,7169F,7177F,7181F,7189F 2両編成の7131F,7135F,7143F,7155F,7159F,7167F,7179F,7187F,7191F,7195F,7197Fです。
ここからは老朽化ではなく事故等で廃車となった編成についてまとめてみます。
C#7102・7852
1996年に忠岡駅付近の踏切で立ち往生していた自動車と衝突。当時7103Fに組み込まれていた元7101Fの当該車両は一次車で当時新1000系にての置き換え計画があったこともありそのまま廃車され、残った7003Fは4両で廃車まで走行しました。
C#7161・7889
2000年7月8日に住之江検車区内で暴走し、車止めに乗り上げ脱線。損傷した当該車両は廃車され、残ったC#7162・C#7890は7123Fと変則的な4両編成を組み南海本線で運用につきました。なおこの編成は2015年に8300系によって置き換えられました。
7185F
2017年10月22日、当日接近した台風21号により樽井~尾崎間の男里川橋梁が陥没。橋梁に差し掛かっていた当該編成は安全確認を行った上で橋を渡りましたが、床下を損傷したため運行中止となりました。すでに7100系の置き換えが始まっていたため修復はせずそのまま廃車となりました。 なおその後しばらくは樽井~尾崎間が運休となり、多くの人に影響を及ぼしたほか方向幕の都合上春木に停車する点で急行と区別していた-急行-(通称:白線急行)によって春木を特別通過する、というある意味謎の列車が夕ラッシュに見られることになりました。
7100系の今後
7100系も登場から40年、更新車両についても更新から20年以上が経過しています。2004年以降は片開きの7000系の置き換えが進められていたため置き換えが落ち着いていましたが、7000系が引退して以降はこの7100系の置き換えが8300系によって進められています。8300系はLCDの設置、扉周りのスペース確保などこれまでにあった問題点が大幅に改善されています。2020年5月現在は高野線での6000系置き換えのため7100系の置き換えは止まっていますが、2023年には全車齢が50歳を超えるため、しばらくすると置き換えが再開するものと思われます。
気になるのは特急「サザン」の動向です。先述した通り自由席車の併結相手が7100系に限定されているため、このまま廃車すると併結相手がいなくなることになります。ですが10000系もすでに登場から35年が経過し、また旧1000系の機器を流用しているため老朽化が進行しており、現在「サザン・プレミアム」及び「泉北ライナー」で使用されている12000系ないしそれに準ずる新型の有料特急用車両で置き換えられると思われます。12000系は2011年に10000系を置き換えるため誕生しました。なぜ8年以上たっても置き換わる気配がないのか。
また、支線系統についても注目しておきたいところです。現在7100系と共に各支線の運用についている2200・2230系ではワンマン運転用車両の編成数が不足するため、新1000系などの2両編成の20m級車両またはズームカー2000系の南海本線所属車両が各支線で運行される可能性があります。(汐見橋線に関しては廃線となる可能性も否定できませんが)。
また、2025年に引退となる場合は南海電鉄140周年と同時になるため、7000系引退時のように旧塗装の緑濃淡ツートンカラーに戻された上でラストラン、となる可能性もあります。その場合は30年近くぶりに旧塗装が復活することになります。
現在の様子
あとがき
南海7100系解説、いかがでしたでしょうか。これまで長い間、姿を少しづつ変えつつも活躍し、多くの人に愛されてきた7100系。南海本線系統で幅広く活躍していますが、残された時間はそう長くないでしょう。今回この記事ではできるだけ用語をかみ砕き、カジュアルにして鉄道趣味に入りたての人にも読みやすくかつ読み応えのある記事にしてみたつもりです。この記事で多くの人が南海7100系に興味を持ち、そしてぜひ南海本線へ行っていただければ幸いです。
しかしながらまだまだ不十分な点もあったのではないかと思います。来年も(多分)何か書くと思うので、ご期待下さい。
最後になりましたが、読んでいただいたすべての方に感謝をしたいと思います。ありがとうございました。
出典
脳みそ
Wikpedia
鉄道ピクトリアル2008年8月臨時増刊号
また、画像提供を頂いた IO3でGOさん、Mura さん、鉄道プレスさん、ありがとうございました。