灘校鉄道研究部公式ブログ

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企画きっぷを考える<第1回>(起稿班研究第六号・その1)

切符には日常的に使う定期券や入場券のほかにも乗り放題きっぷや運賃が割り引かれるお得な切符など、無数の企画切符があります。今回は、この企画切符についていくつかの例を挙げながら、8回にわたって様々な視点で考察します。

 

前半4回は様々なタイプのフリー切符をみていきます。

 

青春18きっぷ(JR各社)~

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(↑青春18きっぷ)

 

青春18きっぷ(以下18きっぷ)は、JR全線の普通列車(特急料金の必要がない列車)、BRT、JRが運営する宮島フェリーが乗り放題となるきっぷです。11850円で5日分がセットになっていて、この5日分は5人で1日使ったり、1人で5日使ったりすることができます。利用するときには最初の入場時に、写真のように日付がいれられ、その後は駅員に見せるだけで入退場が可能です。1日あたり2370円という価格から、鉄道ファンを中心に重宝されています。

使用可能期間が定められており、春期(3月1日~4月10日)・夏期(7月20日~9月10日)・冬季(12月10日~1月10日)の3期となっています。それぞれ、長期休暇シーズンにあたり、通勤・通学利用が減少し、輸送力が余剰となるためそこに乗客を誘導する狙いがあると思われます。この考え方は時差回数券・昼間特割きっぷなどに共通しています。

 

さて、この切符について特筆すべきことは新幹線の並行在来線の処遇でしょう。

北海道新幹線開業に際しては、在来線で北海道と本州を行き来できなくなったため、18きっぷをもっていれば北海道新幹線に2300円で乗車でき、かつ道南いさりび鉄道木古内五稜郭間に片道乗車できる「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」が発売されています。それに対し、北陸新幹線開業後、第三セクター化された旧北陸本線では基本的には18きっぷの利用が不可能となっています。(例外として、七尾線城端線など、JR線のみでは他線区まで移動できない路線に乗車する際は、第三セクター線の指定された線区に乗車できます。)これにより、18きっぷで北陸を縦断することが不可能となっています。今後新しい新幹線路線が開業していくにつれ、18きっぷで乗車できなくなる並行在来線は増加すると思われます。

JRとしては、新幹線に乗客を誘導する、などの観点から18きっぷ第三セクター区間に乗車可能にするメリットはほとんどありません。しかし、第3セクター線、とりわけ北陸各社のような沿線人口の比較的少ない線区にとっては、少しでも乗客が増加することが必要です。18きっぷの年間販売枚数は約70万枚程度といわれており、第三セクター線にもある程度の旅行客の流入が見込めます。

 

そこで、18きっぷ利用者向けに通常よりも運賃を割り引いて第三セクター区間に乗車できるきっぷを販売する、ということが考えられます。このようなきっぷを発売すると、これは、沿線にとっても町の活性化につながり、悪いことではないでしょう。

 

さらに、並行在来線に限らなくとも18きっぷの活用は可能でしょう。実際に、三陸鉄道では、18きっぷ利用者向けのフリーきっぷ、智頭急行では18きっぷシーズンのみに販売されるフリーきっぷが発売されています。地方のローカル鉄道においては、少なからずいる18きっぷ利用者に向けたサービス・戦略というのも、有効かもしれません。

 

次回は、18きっぷとは客層の異なる、関西1デイパスを考察していきます。

 

執筆:No.7405

校正:No.7005(編集長(当時))