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地方鉄道経営再建の処方箋<第2回>(起稿班研究第七号・その2)

 前編では、値上げによる経営再建の可能性について述べましたが、今回はサービスの質の低下による経営再建の可能性について述べたいと思います。

 この方法は、収益を高めるというよりは、経費を削るという観点のもとに基づいています。例を挙げるとすれば、減便や老朽化した車両に延命工事や体質改善を行って使い続ける(もっとも、新車を導入したほうが安上がりな場合もしばしばありますが)ことや人件費削減のために駅員配置駅を減らす等です。

 大抵の場合、これらは値上げと同時に行われます。一例として北条鉄道を挙げてみましょう。

 北条鉄道の前身は国鉄北条線という国鉄の一支線でした。しかし、1981年に特定地方交通線第一次廃止対象に指定され、廃止が承認された後、1984年に第三セクター鉄道として再建することが決定され、1985年北条鉄道として再出発しました。

 しかし依然として経営は苦しく、1992年には5300万円の赤字を記録(神戸新聞NEXT 2017/4/1より)。だがボランティア駅長の公募などで人件費を下げ、また値上げ(分離当時初乗り130円であったが現在は150円になっている)などの努力を行った結果、赤字は2015年に1200万円まで圧縮されました。今回はこのケースを例にして考えてみましょう。

 北条鉄道北条線には途中に交換設備のある駅がなく、したがって常時1編成で回しています。よって必然的に車両設備に関する経費は最小限に抑えられるのです。また従業員数も10人(2007年のデータであり、今では多少変わっているかもしれません)とコンパクトな会社です。またこれは今回の本質から外れますが、北条鉄道ではキーホルダーや古枕木等の販売も行っています。筆者が行った時には中古Nゲージの販売も行っていました。これらの収益もあるのでしょうが、客は多いとは言えませんでしたから、やはり旅客収入に依存する面が大きいと考えられます。車両は3編成あり、いずれも2000年に製造されたフラワ2000形です。うちフラワ2000-3は2008年4月に廃止された三木鉄道から1800万円で購入しました。これは破格の値段と言えます。

 このような経営努力が結実したのか、赤字は20年前の4分の1に圧縮されましたが、すべてのケースでうまくいくとは限りません。

 減便すると基本的により不便になりますから、車に転換する利用客も増える可能性が高いです。ここで前回にも述べたKTRに関するアンケート(http://opac.ryukoku.ac.jp/webopac/skk-np_040_012._?key=MCDAYP)を再び見てみましょう。

 質問1「現在のKTRの運行頻度は1時間だが、これがどのぐらいになったらKTRの利用をやめるか」とあるが、これは「1時間20分おき」が32.4%と全体の3割超を占めています。つまり、運行間隔が20分広がるだけで利用客が3割減るということです。実際はそこまで失わないにしても、多くの客を失うことは火を見るより明らかであります。

 減便による減益と減便によるコスト削減のバランスを考えた経営が大事であるといえそうです。

 

執筆:No.7409

校正:No.7212(起稿班班長)

 

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