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地方鉄道経営再建の処方箋<最終回>(起稿班研究第七号・その7)

 鉄道会社の重要な副業として、「路線バスの運行」を忘れてはなりません。鉄道路線というのは都市部あるいはJRや大手私鉄との乗り換え駅への輸送に使われるという性質上、通勤や通学に使われるわけでもありますから、便利さは速達性に比例するといえます。したがって通常駅間距離が短すぎると速達性が損なわれるから不便です(もっとも阪神電鉄のように各停に充当される車両の加減速度を高め、短い駅間距離でも十分な速達性を確保するような手法もあるが、これは特殊ケースである)。具体的には最低1キロの駅間距離がほしいところではあります。

しかしながら地域密着輸送には停留所間の距離が短いほうが望まれますし、ましてや地方ともなると高齢者の数が多くなるわけであって、高齢者にとっては家から最寄りの停留所までの距離が長いことは肉体的な負担をもたらしますから一層停留所間の距離の短縮が求められます。だが前述の理由により鉄道路線では停留所間の距離の短縮をすると逆に不便になるのだから、地域密着輸送と地域都市間輸送を同時に受け持とうとすると必然的に鉄道路線とバス路線を両方保有しなければなりません。

よって鉄道会社はバス路線を持っているところが多いです。近畿圏だけでも7割以上の鉄道事業者がバス路線を持っています。

 しかしバス市場は現在低調気味であって、国土交通省の資料(平成27年度の一般乗合バス事業(保有車両30両以上)の収支状況について)によると、大都市部では収支率103.2%を達成し黒字であるが、その他地域では88.3%と赤字です。やはりバスも地方では経営が厳しいのだと思わざるを得ない節もあります。

 また、バスも鉄道に比べると利益率が低く、バス事業は平成28年度の決算を見ると(速報版であるが)収入209億1700万円、利益15億8600万円で営業係数108であるのに対し、鉄道事業は収入537億4300万円、利益92億9700万円で営業係数120であるから、ここからも鉄道事業のほうが利益率が高いことがわかります。 

 また、これは鉄道事業のカバーとしてのバス事業という視点からは外れるものの、安さを売りにした高速バスの運行を行う会社もありますが、これに関しては深入りを避けます。

 

 ひとまず全国の地方鉄道の経営努力を7回にわたって見てきましたが、やはり地方鉄道全体としてみると総じてどこも経営が苦しいのが実情であって、これは地方の人口減少という大きな流れの中で必然的に起こる現象ですから仕方ない面もあります。地方自治体や国といった単位での努力が地方鉄道のみならず地方の企業を潤わす最善策であるということを再確認しなければならないのではないでしょうか。

 

執筆:No.7409

校正:No.7212(起稿班班長)

 

起稿班研究第七号の過去記事はこちら↓

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