灘校鉄道研究部公式ブログ

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地方鉄道の知恵<第4回・前編>(起稿班研究第三号・その7)

1.はじめに

 前回は三毛猫「たま」で有名な和歌山電鐵を扱ったが、今回は「ストーブ列車」などで有名な津軽鉄道を取り扱う。

 

2津軽鉄道について

 陸奥鉄道・川部~五所川原(現・五能線)が国に買収されたとき、株主が支払いで手に入れた資金を用いて設立された。開業したのが昭和大恐慌と重なり苦しい出だしであったが、バス事業へと多角化することで切り抜け(1955(昭和40)年にバス部門は弘南バスへと移譲された)、現在では利益を上げている。

 

3.各列車の概要について

 「ストーブ列車」は客車にだるまストーブを設置して暖房とし、ストーブの暖かさと窓からの銀世界を楽しめるようになっている。「ストーブ列車」は津軽鉄道が運行を開始した1930(昭和5)年の12月から運行された歴史の長い列車である。戦時中の物資欠乏期は運行を取りやめたものの1947(昭和22)年より運転を再開し、現在まで引き続いて運行されている。現在は毎年121日より翌年の331日までの運行であり、乗車には乗車券の他に「ストーブ列車券」が必要である。なお、「ストーブ列車」は通常車両(特別料金は不要)の車両に連結して運行される。

 

 「風鈴列車」は風鈴を客車内に吊るし、短冊を下げた列車である。毎年71日より831日まで運行される。この期間は全列車が「風鈴列車」で運行され、また特別料金は掛からない。納涼の効果が期待できるが、それに加えて風鈴が地元の津軽金山焼であり、伝統工芸の宣伝にもなっている。このような趣旨の列車は他にも智頭急行などで運行されている。

 

 「鈴虫列車」は駅員の飼育した鈴虫のかごを車内に設置し、鈴虫の音色を楽しめる列車である。こちらも「風鈴列車」と同様に運行期間中は全列車が「鈴虫列車」となる。91日より10月中旬頃までが運行期間として設定されている(鈴虫の生育状況によって時期は変動するという)

 

4津軽の冬の風物詩へ―――ストーブ列車のこれから

 3.において3つの主なイベント列車を挙げたが、この中でもずば抜けて有名なのは「ストーブ列車」だろう。先述の通り歴史が大変長く、また全国的に見てもかなり知名度が高いと言える。そんな「ストーブ列車」であるが、決して安泰なわけではない。「ストーブ列車」はDD35型機関車のけん引により運転されるが、このDD35気動車のデビューしたのは1957(昭和32)年。日本でもかなり初期のディーゼル機関車であり、当然ながら老朽化が進んでいる。津軽鉄道では通常の営業列車ではレールバスが用いられるが、機関車はDD35型のみ所有し、また保有している2両のDD35型機関車(DD351DD352)の内DD351が故障のため休車中であり、運用に入るのはDD3521両である。つまりDD351日で23往復の「ストーブ列車」の牽引を一手に引き受けているのである。DD35型機関車が使えなくなる日はそう遠くはない。ストーブ列車の客車が製造されたのもほぼ同年代である。機関車はJRなどから中古車両を譲渡してもらうことが比較的可能だと思われるが、客車の数は全国的に見ても数が減っている。「ストーブ列車」は繁盛こそしているもののお先が決して明るい訳ではない。

 

 上記のように車両の老朽化が起こっているため、廃止の声が出たこともある。しかし地元自治体からの継続の要請や全国のファンの惜しむ声があったため、廃止が撤回され、現在でも運行している。しかし2007(平成19)年から維持のため「ストーブ列車料金」を徴収している。こうなると、観光で来た人はそれでも「ストーブ列車」を利用するであろうから増収につながるが、普段から利用しているのなら「ストーブ列車」は目新しいものではなく、むしろ「ストーブ列車料金」をわざわざ払うのは億劫に違いない。地元利用客のために「ストーブ列車」に気動車(すなわち一般車、もちろん暖房付き)を連結しているから地元利用客が追加料金なしで乗れる列車の本数が減った、といった問題が起こった訳ではないが、増結する分の列車で経費がかかることになる。果たして増収になっているのか。疑問である。

 

 それはともかく、このような大規模な列車はその分課題が多いと言えるだろう。「ストーブ列車」の場合は、今一番差し迫っている課題は機関車、客車の老朽化である。JRから中古車両の譲渡を受けるのが最適解であろうか。少なくとも車両の新造は難しいだろう。いつ無くなるだろうか。そんな不安の翳を全く見せずに、毎冬訪れる観光客を暖かいストーブをもって歓迎してくれる。

 

前編はここまで。後編ではストーブ列車以外のイベント列車について考察する。

 

後編はこちらです↓

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これまでの起稿班第三号記事はこちらです↓ nrcofficial.hatenablog.jp

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