灘校鉄道研究部公式ブログ

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地方鉄道の知恵<第1回・前編>(起稿班研究第三号・その1)

 最近、全国各地の鉄道会社は、第三セクター鉄道からJRに至るまで、様々な硬券の切符を発売するところが増えてきたようです。2015年度の鉄研旅行で通った三陸鉄道でも希望すれば硬券の切符を買うことができます。また同じく通った秋田内陸縦貫鉄道では、「思い出の硬券セット」と名付けて沿線29駅の硬券入場券セットを販売しています。このようにいろいろな鉄道会社が硬券の切符を販売する中、9月1日、井原鉄道では長さが41.7cmもある「長~~~い硬券」の販売を開始しました。以下はその概要についてのPDFの引用です(引用元: http://plus.harenet.ne.jp/~ibarasen/pdf/nagai.pdf)

 

 井原鉄道では、多くの方々が鉄道の旅を楽しむ秋の行楽シーズンを控え、牛来線記念としてもお求めいただけるようユニークで心に残る一品として、このたび「長~~~い硬券シリーズ」を発売することとします。

 全線(総社~神辺)片道乗車券と普通手回り品切符の2種類で、長さは当線の営業総延長41.7kmに因んだ長さ41.7cmです。

 当社調べによりますと、硬券としては国内において他に類を見ない長いサイズであり、観光客等の皆様に旅の思い出としてお勧めしてまいります。

 

 日本の鉄道の乗車券に用いられる硬券には「A型」「B型」「C型」「D型」の4種類のタイプがあります。それぞれサイズは3.00×5.75、2.50×5.75、6.00×5.75、3.00×8.70(単位はすべてcm)です。それに対して、この井原鉄道の切符はこのうちの「「D型」をおよそ5枚並べた長さがあるのです。いったいどのようにしてこの「規格外」の大きさの切符を発行するのでしょうか。

 井原鉄道に尋ねてみたところ、硬券の切符の製造を外部業者に委託しているため詳しくはわからないが、おそらく切符を裁断する長さを調節しているのだろう、とのことでした。現在はわずかに残る乗車券専門の印刷会社が細々と製造を続けています。最近の製造の現場においてはコンピューターなどが用いられています。

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[写真1] 井原鉄道吉備真備駅(岡山県倉敷市)にて、IRT355形0番台。

 

 閑話休題。視点を変えて、井原鉄道の立場からこの切符について考えたいと思います。井原鉄道神辺駅(広島県福山市)~総社駅(岡山県総社市)とを結ぶ路線です。地図上では山陽本線の少し北を走っており、県の中心とは少しずれています。沿線の景色の大部分は田んぼなので、五能線(秋田県東能代駅と青森県の川部駅を結ぶ147.2kmの路線)のように景色を売りにした観光列車を走らせても魅力が薄いです。そこで、地元の施設を利用する方が描いた絵を車内に貼った車両を走らせるなどの試みをしています。また去年は、岡山県立大学吉備国際大学センター試験を受験する人のために列車の増結を行ったり、「合格鉛筆」を配布したりしました。

 これらの取り組みが功を奏したのか、 それらの取り組み最盛期の平成15年から漸減していた利用客数が平成22年を境に少しずつ増えだし、平成26年にはほぼ最盛期と同じ、およそ111万人の利用客数を計上しました。今年で17年目を迎えた井原鉄道はより地元に密着した鉄道になったといえると思います。

 

 後編は、井原鉄道が行っているもう一つの取り組みについて「長~~~い硬券」を例に考えたいと思います。

 

執筆者:No.7105

校正:副編集長(No.7005)

 

後編はこちらです↓

nrcofficial.hatenablog.jp