企画きっぷを考える<第3回>(起稿班研究第六号・その3)
~スーパーホリデーパス(井原鉄道)~
井原鉄道は、岡山県南部に位置する総社駅と広島県南東部に位置する神辺を結ぶ私鉄です。国鉄が吉備線の延長と位置付けて計画した路線を井原鉄道が引き継いで開業させたため、路線が高規格であることが特徴です。
(↑スーパーホリデーパス。有人駅と列車内で購入できる。)
今回は、この井原鉄道のフリーきっぷである「スーパーホリデーパス」(以下ホリデーパス)を題材に、井原鉄道への観光客の誘致に企画きっぷを活用するという観点から考えていきます。
スーパーホリデーパスは、大人1000円、子供500円で井原線全線(総社・神辺間)が乗り放題となる切符です。総社・神辺間の片道運賃が1000円強なので、無難な運賃設定といえます。さらに、沿線の食堂・お土産屋などの割引特典が付いています。沿線の活性化につながる取り組みです。典型的な「地方鉄道のフリーきっぷ」といったところでしょうか。また、「ホリデーパス」の名前の通り、土日・休日と各種長期休暇のみ使用できます。
井原鉄道は、沿線人口が比較的少ないほか、福山、倉敷といった市街地を通らないことなどから、売り上げが伸び悩んでいます。また、現在も、沿線人口は減少が続いています。そのような中、観光客を沿線外から取り込むことが増収へとつながると思われます。
しかし、沿線には有名な観光地が少なく、集客力は高いとはいえません。そこで、井原鉄道では「ななつ星」や岡山電気軌道の「MOMO」などをデザインしたことなどで知られる水戸岡鋭治氏がデザインした「夢やすらぎ号」を運転するなど、観光客の誘致に取り組んでいます。ホリデーパスもその一部で、さらなる売り上げの増加が望まれます。
井原鉄道に乗客が流入しない理由は、沿線の観光施設の乏しさのほかに、そのアクセスの悪さにあると思われます。前述のとおり、井原鉄道のターミナルは総社・神辺といった郊外の駅であり、周辺も住宅が中心です。沿線外から乗客を流入させるとすれば、人口が多いうえ、商業施設、観光施設の多い岡山・倉敷・福山といった都市からとなりますが、これらから井原線沿線に向かおうと思うと乗り継ぎが必要となります。(例外として1日に数往復、福山直通列車が設定されています。)
井原線列車の倉敷直通運転への要望も沿線で上がってはいますが、実現へのハードルは高いでしょう。こういった短所を埋められる施策が必要となってきます。
そこで、ホリデーパスを活用してもよいかもしれません。
やはり、有名観光施設のない井原鉄道は、知名度を上げていく必要があります。
便利なホリデーパスを宣伝することで井原鉄道を訪れる動機となりえます。
さらに、ホリデーパスの付加価値として、「岡山・総社間の運賃が割り引かれる」といったものを設定すると、さらに安価で訪問できるという印象が強まるでしょう。
ここまで、観光客の誘致について、企画きっぷの活用という面から考えてきました。井原鉄道の場合、岡山から総社へ、福山から神辺へという移動が必要なのがネックのひとつです。そのため、JRとの連携が求められます。さきほど「ホリデーパスの付加価値として『岡山・総社間の運賃が割り引かれる』」ということをあげましたが、それ以外にもすでにJR西日本の岡山県の路線が乗り放題となる「吉備の国くまなくおでかけパス」では井原鉄道全線がフリー範囲に含まれています。こういった連携が広がっていくことが望まれます。
次回は、外国人観光客向けのきっぷについて考察していきます。
執筆:No.7405
校正:No.7212(起稿班班長)
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