灘校鉄道研究部公式ブログ

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地方鉄道経営再建の処方箋<第3回>(起稿班研究第七号・その3)

 前回記事までで一通り基本的な方策の効果について見てきましたが、問題点はやはり「車との競合」です。これは抜本的な経営改革を望むならば、「車にできないサービスを提供する」ことが重要であるということを示しています。とはいえ、実現は難しいもので、GWや夏休みや冬休みなど、学生の休みの期間にあわせて特別列車を運行するなどの取り組みを行うのはよく見られる光景でありますが、総じて車内は鉄道ファンで埋め尽くされることが多く、ターゲットとするファミリー層は取り込めていないというのが実情です。

 だが、そのような取り組みが結実し、経営が好転したり、赤字を圧縮できたりするケースも往々として存在します。今回はそのケースについて見ていきましょう。

3 その他の経営努力が結実した例

 前回までに見てきた内容は、いずれも旅客数を増やすための努力ではありませんでした。そこで今回は旅客数を増やすための努力について見てみたいと思います。

3-1 鹿島臨海鉄道の努力~他業種とタイアップ~

まずは、昨年2年ぶりに決算が黒字化した鹿島臨海鉄道について見ていきましょう。

 黒字化の大きな要因は、2015年11月に沿線の大洗町を舞台とする人気アニメ「ガールズ&パンツァ―」の劇場版が公開されたのに伴って、定期外乗客数が2万4000人も増加(いわゆる「聖地巡礼」とよばれる行動によって観光客が増加した)したためと鹿島臨海鉄道は説明しています(ねとらぼ 2016年6月21日掲載)。

しかし、いわゆる「聖地巡礼」行為は車でもできるのであって、付加価値がなければ鉄道で行こうとする人は依然として増えないままです。

鹿島臨海鉄道の上手い点は、「ガルパン列車」なる同アニメのラッピングが施された列車を運行(しかもアニメ第一話放送から1か月半後に運行を開始する驚きの速さでした)したり、記念乗車券を発売するなどして「車による聖地巡礼では得られないもの」を売り出すことに成功。震災の影響で減少していた旅客数を別の形で回収することに見事成功したのです。

同じような取り組みはのと鉄道でも行われています。こちらは「花咲くいろは」というアニメ作品とタイアップしたようですが、こちらは依然として赤字が圧縮されていないままです。

3-2 JRとの乗り入れ等による利便性の向上

 このセクトの主題は、智頭急行や前述の鹿島臨海鉄道のようにJR車をその社の路線内に乗り入れさせることでその区間の運賃を取り込む手法ですが、この手法が使えるシチュエーションは限られています。

 基本的にJR車の乗り入れによってJRになんらかのメリットがないと乗り入れは実施されません。

ところが、乗り入れによってメリットが発生するような路線は意外と少ないのです。次回はこれについてじっくり見ていきましょう。

 

執筆:No.7409

校正:No.7212(起稿班班長)

 

起稿班研究第七号の過去記事はこちら↓

 

nrcofficial.hatenablog.jp

nrcofficial.hatenablog.jp

 

地方鉄道経営再建の処方箋<第2回>(起稿班研究第七号・その2)

 前編では、値上げによる経営再建の可能性について述べましたが、今回はサービスの質の低下による経営再建の可能性について述べたいと思います。

 この方法は、収益を高めるというよりは、経費を削るという観点のもとに基づいています。例を挙げるとすれば、減便や老朽化した車両に延命工事や体質改善を行って使い続ける(もっとも、新車を導入したほうが安上がりな場合もしばしばありますが)ことや人件費削減のために駅員配置駅を減らす等です。

 大抵の場合、これらは値上げと同時に行われます。一例として北条鉄道を挙げてみましょう。

 北条鉄道の前身は国鉄北条線という国鉄の一支線でした。しかし、1981年に特定地方交通線第一次廃止対象に指定され、廃止が承認された後、1984年に第三セクター鉄道として再建することが決定され、1985年北条鉄道として再出発しました。

 しかし依然として経営は苦しく、1992年には5300万円の赤字を記録(神戸新聞NEXT 2017/4/1より)。だがボランティア駅長の公募などで人件費を下げ、また値上げ(分離当時初乗り130円であったが現在は150円になっている)などの努力を行った結果、赤字は2015年に1200万円まで圧縮されました。今回はこのケースを例にして考えてみましょう。

 北条鉄道北条線には途中に交換設備のある駅がなく、したがって常時1編成で回しています。よって必然的に車両設備に関する経費は最小限に抑えられるのです。また従業員数も10人(2007年のデータであり、今では多少変わっているかもしれません)とコンパクトな会社です。またこれは今回の本質から外れますが、北条鉄道ではキーホルダーや古枕木等の販売も行っています。筆者が行った時には中古Nゲージの販売も行っていました。これらの収益もあるのでしょうが、客は多いとは言えませんでしたから、やはり旅客収入に依存する面が大きいと考えられます。車両は3編成あり、いずれも2000年に製造されたフラワ2000形です。うちフラワ2000-3は2008年4月に廃止された三木鉄道から1800万円で購入しました。これは破格の値段と言えます。

 このような経営努力が結実したのか、赤字は20年前の4分の1に圧縮されましたが、すべてのケースでうまくいくとは限りません。

 減便すると基本的により不便になりますから、車に転換する利用客も増える可能性が高いです。ここで前回にも述べたKTRに関するアンケート(http://opac.ryukoku.ac.jp/webopac/skk-np_040_012._?key=MCDAYP)を再び見てみましょう。

 質問1「現在のKTRの運行頻度は1時間だが、これがどのぐらいになったらKTRの利用をやめるか」とあるが、これは「1時間20分おき」が32.4%と全体の3割超を占めています。つまり、運行間隔が20分広がるだけで利用客が3割減るということです。実際はそこまで失わないにしても、多くの客を失うことは火を見るより明らかであります。

 減便による減益と減便によるコスト削減のバランスを考えた経営が大事であるといえそうです。

 

執筆:No.7409

校正:No.7212(起稿班班長)

 

前回記事はこちら↓

nrcofficial.hatenablog.jp

 

地方鉄道経営再建の処方箋<第1回>(起稿班研究第七号・その1)

1.まえがき

 地方の人口減少が叫ばれる当世ですが、鉄道業はそのあおりを十分に受けている業種の最たるものです。利用者が少なければ、収益はおのずと減少し、赤字に転落する。これは鉄道業のみならずすべてのサービス業にいえることです。だが、経営者にとって鉄道業はほかのサービス業にくらべて圧倒的に経営再建への努力が必要であるといえるでしょう。なぜならば、鉄道業というのはいわゆるライフラインの一つであり、その路線がつぶれると都市部に出ることができない人がいる以上、経営が火の車であるからといってなかなか店をたたむことができないからです。従って鉄道会社は総じて知恵を絞って努力をして経営を上向けようとします。今回は、その努力にスポットを当てて書くことにしましょう。

 

2.基本的な方策

 この章では経営努力についてのおおまかな二つの流れについて述べたいと思います。

 基本的に、経営再建をめざす会社は運賃を上げるかサービスの「質」を低下するかの二者択一の選択をいやおうなしに迫られます。ではこの二つについてそれぞれ見ていくことにしましょう。

 まず一つ目の「運賃値上げ」であるが、これはしょせん即効的なものにすぎません。なぜならば、地方における鉄道の有力な対抗馬として「車」がありますが、車は高速道路や有料道路を走らない限り、基本的にはガソリン分しかお金がかからないので、あまり運賃を高くしすぎると車に乗り換えられてしまい、結果的には利用客の減少に輪をかけて、合計でみると収益がさらに減少したなどというケースは容易に考えられます。

 これに関しての興味深い調査結果があります。

龍谷大教授の井口富夫氏が2009年3月に行ったKTR(北近畿タンゴ鉄道)に関するアンケート(http://opac.ryukoku.ac.jp/webopac/skk-np_040_012._?key=MCDAYP

の中で、「現在のKTRの初乗り運賃が200円であるとして、初乗り運賃が選択肢のどの金額に値上げされるとKTRの利用をやめるか」という質問があり(ちなみに選択肢は220円、240円、260円、280円、300円、それ以上、利用し続ける)、それに対する回答で一番多かったのは300円であり、占める割合は25.7%でした。以下「利用し続ける」20.9%、220円20.3%と続いていますが、この結果が示しているのはやはり「値上げの許容範囲は100円まで」ということではないでしょうか。具体的な選択肢が300円どまりであったことによる心理的効果があったかもしれませんが、それを差し引いたとしても信頼のおけるデーターです。ちなみにこのアンケートには「何円まで値下げしたら自家用車利用者がKTRに乗り換えるか」や「KTRを利用する理由は何か」など車とKTRに関する質問がありました。興味のある方は先のリンクから結果を見ていただくとよいでしょう。

 

 次回はサービスの質の低下による経営再建の可能性について述べたいと思います。

 

執筆:No.7409

校正:No.7212(起稿班班長)

神戸電鉄1100系(神鉄の車両形式part1)

神戸電鉄1100系は3両編成での運用の増加により、1969年から1972年にかけて13編成39両が製造された形式です。50年近く活躍している車両で、外観は昔の状態をかなり保っています。

現在1103編成、1105編成、1107編成、1109編成、1113編成、1115編成、1119編成、1121編成の8編成24両が在籍し、1113編成は1075を連結して4連、その他の編成は3連で運用されています。また、1117が保存されています。

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製造当初の編成は電動車~付随車~電動車の編成で、

《デ1100形》+《サ1200形》+《デ1100形》

1101-1201-1102

1103-1202-1104

1105-1203-1106

1107-1204-1108

1109-1205-1110

1111-1206-1112

1113-1207-1114

1115-1208-1116

1117-1209-1118

1119-1210-1120

1121-1211-1122

1123-1212-1124

1125-1213-1126

となっていました。

このうち1212はデ860形864、1213は同じく865からの改造編入でした。

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ラッシュ時にデ1070形(part2で紹介する予定です)との連結を行ったため、押部谷駅ではその作業を見ることができたほか、1978年からはデ1350形(part3で紹介する予定です)などとの5両編成の運用もはじまり、連結/解結も志染駅で行われるようになりました。

1986年からは冷房化工事が実施され、車内が快適になりました。

また、2000年に1115編成に1125を、1119編成に1126を組み込んで

1115-1125-1208-1116

1119-1210-1126-1120

となり、1213が廃車されました。

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2001年からはワンマン化改造が開始され、1101編成~1109編成が2001年に、1115編成が2008年に、1119編成が2009年に改造されました。

2005年には1123編成の1123、1212が廃車され、1124は1121編成に組み込まれ、2009年のダイヤ改正によりワンマン非対応の1117編成が廃車されました。

さらに2013~2015年に1115編成、1119編成、1121編成が3両編成に戻り1125、1126、1124が廃車されたほか、6000/6500系に置き換えられ1111編成、1101編成も廃車となりました。

今後も6500系の増備や旅客の減少により数を減らすと思われます。

レトロな車両なので、三木や有馬温泉などの観光のついでに見てみてはいかがでしょうか。

 

執筆:No.7502

写真:No.7202

校正:No.7212(起稿班班長)

2017年第36週活動報告(てっけん。第31回)

こんにちは。活動紹介記事「てっけん。」をお届けします。この「てっけん。」では各班の活動の様子について簡単にお伝えします。今回お伝えするのは第36週(9月11日~17日)の活動報告です。

 

【部全体に関して】

9月14日に部内予算折衝を実施しました。部内予算折衝では模型班・軌道班・工学班の班長と副班長が部長と来年度の班活動で使う予算について話し合いました。

 

【模型班】

部内予算折衝を実施しました。

【工学班】

部内予算折衝を実施したほか、ミニ電車の客車の連結器部分の錆取りを行いました。

【軌道班】

部内予算折衝を実施したほか、先週に引き続き文化祭大レイアウトのボード上の線路の撤去を行いました。

【起稿班】

次週から神戸電鉄の車両紹介記事を掲載する予定です。

 

執筆:起稿班班長(No.7212)

和田岬線について(後編)

前回は和田岬線の路線や車両について紹介しましたが、今回は山陽本線内で行われる回送運転について紹介します。個人的には、こちらの方が興味深いかもしれません。

 

山陽本線内の回送

和田岬線の車両(103系)は、乗務員研修にも使われるため、運用のない昼間に、様々な運転が行われます。その中のいくつかを、段階に分けて紹介したいと思います。

 

1.神戸貨物ターミナル駅までの回送

まずは、兵庫駅から近いJR鷹取駅付近にある神戸貨物ターミナル駅まで行きます。

 

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神戸貨物ターミナル駅に停車中の103系

和田岬線兵庫駅を出ると、和田岬駅に向かう線路と山陽本線へと合流する線路と分かれます。ここから山陽本線の線路に入って、比較的ゆっくり走るのです。神戸貨物ターミナルまでは和田岬線専用の線路なので、前後の列車に影響することはありません。乗務員研修の第一関門と言えるでしょう。

 

2.山陽本線回送

兵庫から、大久保まで行ったのち、折り返して西明石の車庫に入庫するものです(帰りはその逆です)。なお、これは103系の車両点検も兼ねて行われることもあります。そして、山陽本線内を爆走します。すごい音ですよー。往年の活躍ぶりが蘇る走りです。僕は、この回送を至るところで撮りました。その写真のいくつかを紹介します。

大久保駅

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明石駅f:id:nrcofficial:20170907185337j:plain

垂水駅(先頭)

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垂水駅(横バージョン)f:id:nrcofficial:20170907185438j:plain

◆垂水福田川

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須磨海岸 

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須磨駅

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◆鷹取

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この回送は、平日に1回ほど、日曜日には必ず走ります。すごい爆音なのでぜひ見てみて下さい。

 

⑤今後の和田岬線

このようにまだ原型に近い103系が何往復もしている和田岬線ですが、今後どうなるかは気になるところです。103系が置き換えられるとしたら、どんな車両になるのか見ていきます。

説1 205系

阪和線の205ですね。6両固定編成で、塗装がスカイブルーで103と同じなので、塗装変更の必要がありません。しかし、201系は和田岬線内での運転試験が実施されているのに対し、205系はまだされていません。

説2 207系

和田岬線では、103系が点検などで西明石に行っている間、207系が代走として走っています。その207系が正式運用に入るというものです。比較的新しい(?)ですが、3両+3両なので、不便ではあります。今後が気になりますね。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。大阪環状線も順次入れ替えが行われていますので、これから103系はどんどん減っていくでしょう。和田岬線103系もこれから注目されるかもしれませんね。

 

※写真は特記なき場合は筆者撮影です。

 

執筆:No.7506

校正:No.7212(起稿班班長)

 

↓前編はこちら

nrcofficial.hatenablog.jp

 

2017年第35週活動報告(てっけん。第30回)

こんにちは。活動紹介記事「てっけん。」をお届けします。この「てっけん。」では各班の活動の様子について簡単にお伝えします。今回お伝えするのは第35週(9月4日~10日)の活動報告です。

 

【部全体に関して】

ミーティングを実施したほか、予算折衝に向けた準備をしています。

また、複数の部員が西大和学園東大寺学園の鉄道研究部に見学に行きました。

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(↑西大和の鉄研)

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(↑東大寺鉄研)


【模型班】

今週は特に活動はしていません。

【工学班】

部室にあるミニ電車の線路設備の向上を図りました。

【軌道班】

文化祭大レイアウトのボード上の線路の撤去がもうすぐ完了する見込みです。

【起稿班】

現在中学1年の部員の記事を掲載しています。他にも複数記事が到着していますので校正等が完了次第掲載する予定です。

 

執筆:起稿班班長(No.7212)