灘校鉄道研究部公式ブログ

灘中学校・灘高等学校鉄道研究部公式です。ご質問などはコメントにお書きいただくか、nrcofficial@gmail.comまでメールをお願いします。

第9回鉄道模型コンテスト全作品紹介<Bブロック>

続いてBブロックの紹介です。学校名の左の番号は来場者の投票などの際に用いる学校番号です。

Aブロックの紹介はこちら

nrcofficial.hatenablog.jp

 

5-共立女子中学・高等学校

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すごい。とにかくすごい。この一言に尽きます。当然モジュールもハイクオリティーなのですが、何年もこのクオリティ-を下げることなく維持できているというのが何よりもすごい。最優秀賞は間違いないでしょう。お客さんが多すぎて、取材をするのも、かなり大変でした。

今回の共立の作品の季節設定は秋です。これまで3年間のモジュールは緑色がメインだったので、新たな切り口です。植物に関する知識抜きでは高いレベルのものは作れない紅葉は、まさに共立の地理歴史研究部の力が最大限発揮できるテーマではないでしょうか。

隅から隅まで非常に丁寧に作りこまれており、よかったところを列挙し始めると、きりがないので、前回までのモジュールより良くなった部分のみ紹介します。

・架線がリアルになった

・鉄道信号を光らせるなど、昨年から始まった電飾がよりレベルの高いものになった

・写真がないのですが、木の幹と枝だけではなく根までもが表現されています。

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高2の部員さん曰く「今年は優秀な高1が頑張ってくれた」とのことです。

高1ということはつまり、来年もモジュール作りに参加するということです。来年の作品作りにあたって、我々も気が抜けません。共立は本当に良いライバルだと改めて思いました。これからも後輩たちに刺激を与え続けていただきたいものです。

最後に共立のもう一つだなと感じた点を2つだけ。

1つはダムの水の色ですね。色が明るすぎるのと、透明感がないです。もっと深さを出した方がいいように思います。

2つ目はプレゼンテーション動画です。せっかく素晴らしい作品を作っているのに、プレゼンテーション動画の内容がここまで薄いのは、非常にもったいないです。

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とまあ、偉そうなことも言いましたが、本当に共立さんには頭が上がりません。我々もまだまだ成長しないといけないと痛感しました。

 

6-東京都立科学技術高等学校

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飯田橋駅を再現したモジュールです。道路のオレンジ色のポールなども細かく作りこまれているのですが、建物の階と階の間に仕切りがなく、一階から最上階まで筒抜けになっていたのは残念でした。

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7-日本大学駒場中学・高等学校

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ロープウェイのある観光地という設定のモジュールです。

ロープウェイは完全自作で、動くようになっています。観光バスが扉やハッチを開けて、さらにハッチの中の乗客の荷物まで再現されているというのには驚きました。

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8-市川中学校・高等学校

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御茶ノ水駅を再現したモジュールです。時間がなかったのか、未塗装のパーツが多いのが気になりました。

 

17-鎌倉学園

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京都名物、鴨川の川床をモチーフにしています。石畳の色の塗り分けがとてもよかったです。

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24-小山工業高等専門学校

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東北本線野崎~西那須野の東北本線と東北新幹線の立体交差を再現したモジュールです。砂利道や架線柱の碍子の塗り分けはとてもリアルでした。高架下の緑についてはもう一工夫あってもよかったかなと思います。

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30-広尾学園中学校高等学校

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多摩川周辺を再現したモジュールです。全体的に細かく作りこまれていて、なかなかいいなあと思いました。神社の屋根とバラストの色はあと一工夫ですね。

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75-聖光学院高等学校

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東急池上線石川台~洗足町を再現したモジュールです。桜などの植物の表現は素晴らしかったです。建物の色をもう少し落ち着かせて、ウェザリングをしていれば全体的にもっと引き締まったかなと思います。

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79-埼玉県立不動岡高等学校

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東武アーバンパークライン北大宮駅付近の乗馬踏切を再現したモジュールです。

車両展示用のボードとしては良いですね。鉄道用地の土壌の色が真っ黒なのが気になりました。

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82-土浦日本大学中等教育学校

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土浦駅を再現したモジュールです。ホーム屋根のウェザリングなどは良かったものの、線路とホームの間にバラストがまかれていなかったり、線路を固定するための釘が目立ちすぎたりしているのが気になりました。

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87-埼玉県立大宮工業高等学校

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市ヶ谷駅を再現したモジュールです。橋の上の大きな水道管や手前の釣り堀が目を引きますが、橋の裏もしっかり作りこまれています。

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106-獨協埼玉中学高等学校

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東武伊勢崎線獨協大学前駅付近の昔と今の様子を盛り込んだものです。バラストの色が単調なのが気になりました。変電所も製品をそのまま置くのではなく、なにかしらのテコ入れがあったらよかったのではないかなと思います。

 

117-千葉県立京葉工業高等学校

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JR千葉駅を再現したモジュールです。中の階段も再現しているのですが、塗装ができていれば...

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121-埼玉県久喜工業高等学校

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東武アーバンパークライン岩塚~東岩塚の元荒川橋梁を再現したモジュールです。川の水の色がとてもいい感じです。

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124-千葉日本大学第一高等学校

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わたらせ峡谷鉄道神戸駅を再現したモジュールです。地下には鉱山の観光トロッコも走っています。

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127-桜丘高等学校

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内房線竹岡駅を再現したモジュールです。緑が単調なので、樹木を植えたり草素材の色調を整えたりすると良いかもしれません。

 

143-神奈川県立藤沢工科高等学校

 

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廃線のあるレイアウトです。奥の道路に白線や道路標識類を表現すると良いのではないかなと思います。

 

Bブロックは以上です。次回はCブロックの紹介です。

 

執筆:No.7211(部長)

写真 :No.7403(模型班副班長)

第9回鉄道模型コンテスト全作品紹介<Aブロック>

2017年8月6日(土)・7日(日)に東京国際展示場にて鉄道模型コンテスト2017が開催されました。今回の連載では第9回全国高校生鉄道模型コンテストモジュール部門の全作品を紹介します。

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今回の参加校は144校の予定でうち4校は出場取りやめになりましたので、140校です。

記事を書くにあたって、全校のプレゼンテーション動画を視聴し、コンテスト一日目に実際の作品をすべて見て回りました。なお記事の執筆時点ではどの学校がどの賞を受賞しているかについてはわかっていません。また、一部の学校のモジュールの写真を撮り忘れてしまいました。大変申し訳ございません。

高校生モジュール部門の展示はA~Hブロックの8つに分かれています。今回はAブロックの紹介です。学校名の左の番号は来場者の投票などの際に用いる学校番号です。

2-立教池袋中学校・高等学校

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伊豆急行線伊豆熱川駅がモデルです。桜はスポンジをピンクに染めて作っています。温泉から煙が出るようになっています。

 

13-奈良工業専門学校

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温泉街と紅葉をモチーフにしたモジュールです。こちらも温泉から煙が出るようになっています。建物には電飾が施されています。山の木をフォーリッジクラスターを貼り付けるだけではなく、木の枝から表現しているところもよかったです。全体的に丁寧に作りこまれており、とても素晴らしい作品でした。お客さんも結構集まっていました。ただし、バラストの色をもとから茶色のバラストをまいており、バラストの汚れが単色であったことや、ガーター橋のウェザリングがされていない点については改善の余地はあるかと思います。おそらく上位に入るのではないかと記事執筆時点で筆者は予想しています。

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25‐青稜中学校高等学校

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モジュールの全体像を撮影するのを忘れていました。大変申し訳ございません。

昭和30年代の東京日本橋を再現したモジュールです。建設中の首都高速に人形を配置するなど、人形の配置にこだわりが感じられました。

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34‐聖徳学園中学高等学校

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モジュールの全体像を撮影するのを忘れていました。大変申し訳ございません。

横浜線八王子みなみ野駅を再現したモジュールです。コンコースの中が細かく再現されていました。

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44‐京華高等学校

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銀河鉄道999の世界を表現したモジュールです。展示場所が明るいのが残念です。暗いところで見てみたいです。

 

46‐早稲田大学高等学院

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西武池袋線中村橋~練馬で行われた大規模な「逆立体化工事」の様子を再現したモジュールです。鉄骨や架線柱の茶色が光沢がかっていたのが惜しかったです。艶消し処理をすると、よりリアルになると思います。

 

58‐早稲田高校

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工業地帯を走る鉄道をイメージしたモジュールです。工場の煙突からは煙が出るようになっています。工場の配管が細かく再現されていました。筆者が個人的に気に入ったモジュールの一つです。

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62‐目黒学院中学・高等学校

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桜の咲く東急東横線中目黒と目黒川を再現したモジュールです。

絵の具で表現したという目黒川の水の色がちょっと黒すぎるかなという感じがしました。

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64‐立正大学附属立正高等学校

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学校のある馬込を再現したモジュールです。東海道新幹線の鉄橋が特徴的ですね。

 

77‐麻布学園

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伊豆急行線をイメージしたモジュールです。道路の色が真っ黒一色なのが気になりました。

 

81‐京都市洛陽工業・京都工学院高等学校

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モジュールの全体像を撮影するのを忘れていました。大変申し訳ございません。

阪和線山中渓~紀伊を再現したモジュールです。関西住みの僕たちにとっては紀州路快速の車内からよく見る景色ということで、実際の光景が頭に浮かびました。筆者の個人的に気に入ったモジュールの一つです。

 

86‐東京都立産業技術高等専門学校荒川キャンパス

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流鉄流山線流山線を再現したモジュールです。駅舎の色がテカテカなのが気になりました。

 

98‐横浜富士見丘学園中等教育学校

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モジュールの全体像を撮影するのを忘れていました。大変申し訳ございません。

神奈川県の宮ケ瀬ダムに鉄道が走っていたらという設定のモジュールです。

石を一つ一つ貼っているのは良かったのですが、その近くの鉄橋も頑張ってほしかったですね。

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101‐成城中学・高等学校

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のと鉄道能登鹿島駅を再現したモジュールです。この作品は140作品の中で

一番道路の表現がリアルでした。

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103‐聖学園中学校・高等学校

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京成本線押上線が立体交差で分岐する青砥駅を再現したモジュールです。

中川の土手の表現がとても良かったです。しかし青砥駅が...ホームはTOMIXのものを3つ組み合わせていたのですが、隙間を埋めていないのが気になりました。高架橋は既製品のものを重ねていたので、作品に合わせて自作(or改造)した方がよかったように思います。

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122‐東京都立町田工業高等学校

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僕たちが取材したときには部員の方がおられず、詳しい話を聞けなかったのですが東北新幹線と在来線を再現したモジュールです。

線路のウェザリングはとても良かったのですが、山などの植物が単調なのが気になりました。

 

142‐駒場東邦高等学校

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上野駅を再現したモジュールです。 線路の周りやホームなど、まだまだ改善できる点はたくさんあるかなと。

 

Aブロックは以上です。次回はBブロックの紹介です。

 

執筆:No.7211(部長)

写真 :No.7403(模型班副班長)

 

 

企画きっぷを考える<第7回>(起稿班研究第六号・その7)

最終回となる今回は少し趣向を変え、乗客を閑散時間帯・列車に誘導する工夫を切符の観点から見てみたいと思います。

 

山陽新幹線の取り組み~

山陽新幹線には「さくら」、「みずほ」、「のぞみ」、「ひかり」、「こだま」という4種別の列車が運行されています。この中でも各駅停車である「こだま」は、乗車率が芳しくありません。「こだま」は時間がかかるため通過利用が「のぞみ」に集中するほか、山陽新幹線は乗降客数が少ない途中駅が少ないことが理由です。

そこで「こだま」の空席利用のため、「こだま」を格安で利用できる切符が多数発売されています。価格はかなり割安で、例えば「こだま指定席きっぷ」の新大阪・広島間を例に挙げると、この切符を使用しない場合10230円であるのに対し、「こだま指定席きっぷ」を利用すると6800円。さらにはこどもの場合1500円と、破格の料金設定です。この切符ですが、先ほど挙げた新大阪、広島といった主要駅だけでなく山陽新幹線内多くの区間で発売されていて、実質上「こだま」を値下げしている、というようにも感じられます。

JRはこだまの指定席を4+4列シートにしているなどサービス向上により「こだま」の乗客を増加させようとしているわけですが、それはつまり座席数を減らしてもよい位「こだま」の乗客が少ないということになります。やはり、少しでも「こだま」に乗ってほしいというJRの考えが想像できます。

さて、これまで、これまでいくつもの切符をみて考察を進めてきましたが、企画きっぷ、トクトク切符というのは条件の設定によっては乗客の増加や宣伝効果など大きな効果を生み出します。こういったものに必要なのは利用者のことを考えた使いやすい切符であり、また、それを巧く宣伝することです。こういった切符は多くありますが、それぞれに様々な工夫がなされています。

 

~おまけ~

先日まで、山陽電車で面白いキャンペーンが実施されていました。企画きっぷを利用しているということで、紹介したいと思います。

このキャンペーンというのは、山陽電気鉄道台湾鉄路管理局の乗車券相互交流です。

まず、日本で山陽電車のフリーきっぷである「○○1dayチケット」を購入し、台湾の指定の駅に持参すれば、台湾で使用できる1日乗車券が進呈され、また、反対に台湾の1日乗車券と山陽電車の「HIMEJI TOURIST PASS」を山陽電車の駅に持参すれば、山陽電車系のいくつかの施設で利用可能な1000円優待券が進呈されます。

この企画を利用する乗客がどれだけいたのかということですが、山陽電車は特に空港アクセス路線でもない中規模私鉄であり、実際にこれを利用して山陽電車台湾鉄路管理局両社を利用した人はかなり少数でしょう。そう考えるとやはり、友好関係の確認というほか、両社の宣伝効果があったでしょう。日本では中づり広告などで宣伝されていましたが、台湾の観光というものの周知につながるほか、山陽電車の1dayチケットの広告にもなります。このような、国を超えたつながりも、面白いですね。

 

※この記事は平成29年2月から4月にかけて書いたものです。切符の販売条件など変更となっている可能性があります。ご了承ください。

 

執筆:No.7405

校正:No.7212(起稿班班長)

 

↓起稿班研究第六号の過去記事はこちらです

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企画きっぷを考える<第6回>(起稿班研究第六号・その6)

~空港アクセスと企画きっぷ~

 

今回は空港アクセス輸送を担う南海電鉄京成電鉄などを例に、考察を進めていきます。

南海電鉄京成電鉄は、それぞれ関西国際空港、成田空港へのアクセス路線を持つ鉄道会社です。南海はラピート、京成はスカイライナーという看板列車が有名です。両社とも、JR線が並行していて、同様に空港アクセス特急を運行するJRとはライバル関係となっています。そこでJRとの競争が行われていますが、価格面で得に移動できるトクトク切符、割引切符がいくつか発売されています。

そのなかに、「成田・関空スカイライナー&ラピートきっぷ」という切符が存在します。

 

f:id:nrcofficial:20170717222410j:plain(↑南海の空港特急ラピート。 松ノ浜にて)

名前の通り京成スカイライナーと南海ラピートの乗車券と特急券がセットになった切符で、価格は通常よりも700円安い3200円。価格はほどほどといったところでしょうか。当然、飛行機で大阪・東京間を移動する乗客へのサービスですが、遠く離れた2社がともに乗車券を発売するのは面白いですね。手軽で利便性も高いでしょう。

また、南海電鉄には「関空ちかトクきっぷ」という、大阪市営地下鉄各駅から関西空港まで、1000円で行くことができる切符もあります。こちらは乗車券のみで、ラピートの特急券はついていません。それほど割引率が高いわけではありませんが、1000円という価格設定と大阪市営地下鉄全駅から乗車可能というのが得した気分にさせます。

JRが関西空港から大阪環状線JR京都線の京都方面に直通しているのに対し、なんばまでしか路線がないのが弱みである南海に、広域に路線網が広がる大阪市営地下鉄が協力することで、利用しやすくなっています。

また、南海は阪神・阪急・近鉄などと連携して神戸、京都、奈良と関西空港を結ぶ切符も販売しています。

 

f:id:nrcofficial:20170717222804j:plain(↑JRの関空特急はるか。 美章園にて)

ここで、それに対するJRを見てみます。JRは、大阪(梅田)や新大阪、京都方面に直通する路線の利点から、北陸方面、山陽新幹線方面、「はるか」停車駅という3通りのトクトク切符を設定しています。北陸方面でははるかに加え、サンダーバードなどの他の特急列車にも乗車可能です。片道のみだった南海に対し、往復乗車券で、有効期限は14日間。旅行などには十分な日程です。往復ということで自由度は低くなりますが、設定駅が多く使いやすい切符です。現在、北陸方面の一部の駅からは北陸新幹線の利用が可能になっています。将来的に北陸新幹線が延伸されると、それに直通する切符が発売されると思われます。

ところで、この切符群の対象駅の最東端は北陸新幹線黒部宇奈月温泉駅となっていて、北陸方面には対象駅が広がりを見せていますがそれだけになっています。また、主要駅のみの設定となっています。

関西空港への需要は関西の広域からあると思われるので山陰線の京都口や湖西・琵琶湖両線、また、「まいづる」など北近畿地区の特急なども範囲にすると需要があるかもしれません。

 

最終回となる次回は、切符の観点から乗客を閑散する列車や時間帯に誘導する仕組みを考察していきます。

 

執筆:No.7405

写真・校正:No.7212(起稿班班長)

 

↓起稿班研究第六号の過去記事はこちらです

 

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企画きっぷを考える<第5回>(起稿班研究第六号・その5)

~往復形式のきっぷについて~

 

今回は、主に観光目的などで使用される、往復形式のトクトク切符について述べたいと思います。

最初に取り上げるのは、「かにカニ日帰りエクスプレス」です。往復のJR特急指定席券に、1回のかに料理が付いた切符となっています。出発地によっていくつかのプランが設定されていますが、京阪神エリアにおいては行き先は山陰・北陸・城崎温泉天橋立となっていて、それぞれ複数の店舗から料理を選ぶことができます。

価格ですが、大阪~鳥取を例に見ると、「日帰りエクスプレス」利用で14500円(安価ななごみプラン・H28年度)に対し、通常の往復運賃は14580円。

日帰りエクスプレスは料理が付いているということで、相当低価格といえます。

 この切符の売りは「日帰り」という手軽さでしょう。価格が比較的低いことも相まって、気軽に旅行に行けるような切符になっています。さらに、自宅から電話で申し込みできること、切符の受け取りが当日でよいことも手軽さを演出しています。

JRはこの企画について、駅や車内でのポスター掲示、パンフレットの配布などの宣伝や多客時における臨時列車「かにカニはまかぜ」の運転など、日本海側への観光需要掘り起こしに力を入れている様子が伺えます。

 

今回はもう一つ、ユニバーサルスタジオジャパンの入場券とセットになった切符をみてみます。

近年注目が高まるUSJ。入場者数は増え続け、2016年度には1390万人を突破しました。鉄道によるアクセスはJR桜島線(ゆめ咲線)のみとなっていて、USJ利用者は桜島線の収入源となっています。

そんなUSJに目をつけないはずがなく、西日本各地からユニバーサルティまでのJRと3日間の大阪周辺のJRフリーパス、USJ入場券にハリーポッターエリア入場確約券、バタービール引換券がセットになった「ユニバーサル・スタジオ・ジャパンスペシャルきっぷ」が発売されています。

この切符、USJの特典の設定が非常に巧みであると思います。

USJに訪れるときにネックとなるのが待ち時間の問題。特にハリーポッターエリアは人気が高く、これの入場確約券はかなり利用客に喜ばれそうです。

また、バタービールというのもちょっとしたことですが利用者にとっては得した気分になります。流行、ニーズに合わせた付加価値の設定がされています。

ところでこの切符、日数設定が3日となっているのですが、USJ入場券は1日分のみ。

つまりあと2日は周遊券を利用した観光を見込んでいます。ただ、この切符の周遊エリア

が微妙な設定になっています。乗車可能範囲は以下の通りです。

大阪環状線全線

桜島線全線

関西本線(天王寺~JR難波)

東海道本線(尼崎~新大阪)

JR東西線全線

JRはなんばなど大阪の繁華街に向かうのは不便で、これでは2日観光するには物足りなさそうです。

USJが主役の切符であるため、利用者が購入時に周遊範囲をあまり意識しない可能性が高く、価格を下げることを優先したのかもしれません。

 

今回は「かにカニ日帰りエクスプレス」と「ユニバーサル・スタジオ・ジャパンスペシャルきっぷ」をあげましたが、これ以外にも同様の切符は多く存在します。

切符とセットとなった特典をどれだけ巧く作ることができるか、利用客をいかに得した気分にさせるかが成功のカギとなるでしょう。

 

次回は空港アクセスの企画きっぷを考察していきます。

 

執筆:No.7405

校正:No.7212(起稿班班長)

 

↓起稿班研究第六号の過去記事はこちらです

 

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企画きっぷを考える<第4回>(起稿班研究第六号・その4)

~外国人向けの切符~

今回は、近年急増している外国人観光客向けの切符を見ていきます。

JRでは、訪日観光客向けに「JAPAN RAIL PASS」を販売しています。

基本的には、JRグループの鉄道・バス(高速バスを除く)と宮島フェリー・東京モノレール・一部の第3セクター線が乗り降り自由となります。

これには新幹線(のぞみ、みずほを除く)や特急など、優等列車も含まれています。また、こういった列車の指定席も取り放題となっています。

価格は7日間の場合普通車用29110円、グリーン車用38880円となっています。

ちなみに、入国管理法の定める「短期滞在」に該当する乗客のみへの販売となっていて、日本在住者は購入できません。

 

このような切符となっていますが、新幹線ひかり号の東京・新大阪間の往復運賃が28280円なので、RAIL PASSの7日間29110円は破格のものです。

鉄道の主なライバルとなっていると考えられる高速バスでは7日間20000円で全国約100路線が乗り放題となる訪日観光客向けチケットを発売するなど、成長を続けています。RAIL PASSには価格を下げて国内間移動の需要を鉄道に引き込もうという狙いがあるのでしょう。

ただ、新幹線や特急に乗車可能なため高速移動が可能であるという大きな利点もあり、もう少し価格をあげてもよいかもしれません。

 

ところで、この切符には指定席をいくらでもとれるというサービスがありますが、どれだけ指定席をとっても料金がかわらないため、複数列車の座席を予約し、結局乗車しないということが起こり得る状態になっています。これでは、混雑の激しい列車の場合、指定席をとれない乗客がいる中指定席には空席が目立つという状況が生まれてしまいます。指定券の発行回数を制限するということも考えてもよいかもしれません。

 

JRはこれ以外にも、JAPAN RAIL PASSと同様の条件で乗車範囲を狭めた北海道レールパス・九州レールパスや北陸エリアパスなど、数多くの訪日観光客向けフリーパスを販売しています。いずれも料金設定はかなり割安になっています。

 

前半は、フリーきっぷを中心に取り上げました。フリーきっぷは観光客向けのものがほとんどですが、工夫によっては様々な効果が得られるでしょう。

次回からは、フリーきっぷ以外のものを見ていきます。

 

執筆:No.7405

校正:No.7212(起稿班班長)

 

↓起稿班研究第六号の過去記事はこちらです

 

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2017年第26週活動報告(てっけん。第29回)

こんにちは。活動紹介記事「てっけん。」をお届けします。この「てっけん。」では週ごとに各班の班長に提出してもらっている「活動報告書」に基づいて、各班の活動の様子について簡単にお伝えします。今回お伝えするのは第24週(6月19日~25日)の活動報告です。

 

【部全体に関して】

鉄研旅行のプランが決定し、参加人数が確定しました。また、班分けの調査も実施しました。

【模型班】

今年の文化祭で展示した一畳レイアウトにさらに木を追加しています。

【工学班】

来年文化祭までの計画を立てました。

【軌道班】

文化祭の大レイアウトのボード上から一部の線路を撤去しました。

【起稿班】

新入部員から原稿が到着しています。校正等ができ次第掲載する予定です。

 

執筆:起稿班班長(No.7212)